子供のいない夫婦が「財産は全部パートナーへ」を実現するためには?【遺言書のすすめ①】

「もし自分が先に逝っても、財産は自動的に全部パートナーのものになるでしょ?」
子どもがいないご夫婦の中には、そう考えておられる方も多いようです。
実は、そうではありません。
後ほど詳しく説明しますが、これを実現するためには、あらかじめ準備が必要なんです。
実は私自身も、子どものいない夫婦の一人です。このテーマをコラムで取り上げたいと思ったのも、この件が他人事ではなく、自分たちの問題として向き合ってきたからです。自分事として考えるたびに、同じ立場の方々にもぜひ知っておいていただきたいと感じています。
今日は、子どものいないご夫婦に特に知っておいていただきたい、相続の「意外と知られていない落とし穴」についてお話しします。
配偶者に「全部」渡せるわけではない
法律の世界では、財産を相続する人があらかじめ決まっています。
子どもがいない場合の基本的な相続人は、配偶者と両親。
つまり亡くなった本人が遺志を残していない場合、法律は配偶者に対して
「あなたの義両親と分けてくださいね」
という方針なのです。
そして、もし義両親が他界している場合はこうなります。
「あなたの義祖父母と分けてくださいね」
更に、義祖父母も他界している場合はこうです。
「あなたの義きょうだいと分けてくださいね」
遺志を残していないと、法律が定めた通りに分配することになるんです。
仲が良くても財産は簡単に割り切れない

ここで、ある日とつぜん相続問題に直面した「ある夫婦」のお話をします。
結婚して25年。子どものいない春樹さんと由美さんは、二人で力を合わせて小さなマンションを購入しました。「老後はここで二人でのんびり暮らそう」と話していた矢先、春樹さんが突然倒れ、帰らぬ人となりました。
遺言書はありませんでした。相続について考えたこともありませんでした。
知人から相続問題の話を聞いたことはありましたが、「うちは親類みんな仲が良いから大丈夫」と、二人ともどこか他人事でした。
遺言書がないので、相続の配分は法律で決められたとおりになります。
春樹さんの両親はすでに他界していたため、相続人は以下のようになりました。
由美さん
夏彦さん(春樹さんの弟)
秋子さん(春樹さんの妹)
法律上、財産の配分は、配偶者である由美さんは4分の3。春樹さんのきょうだいは合わせて4分の1です。

マンションは二人で購入したものでしたが、不動産は「4分の3」と「4分の1」に切り分けることができません。そして財産の大部分が不動産(マンション)であったため、それ以外の現金を夏彦さん・秋子さんに渡しても4分の1には全然足りません。マンションを売却すればきっちり分けられますが、由美さんにとっては住んでいる家。簡単に手放すわけにはいきません。
話し合いは長引き、由美さんは悲しみの中で、義きょうだいと財産の分け方について熱心に交渉しなければならなくなりました。
もし遺言書があったとしたら?
たとえば、春樹さんが「全財産を妻・由美に譲る」という遺言書を残していたらどうなったでしょう?
その場合、由美さんはそのマンションをそのまま引き継ぐことができます。
夏彦さん・秋子さんと話し合いを持つ必要もなく、相続手続きがスムーズに完了します。
もちろん、何のわだかまりもなくこれを実現するためには、春樹さんが生前にあらかじめ、そのような遺言を残す旨、きょうだいに伝えておくことが大切です。
「うちは仲がいいから」が一番危ない
相続のトラブルと聞くと、普段から不仲な家族で発生するものと思われがちです。
でも実際のところ、そうではありません。
むしろ「うちは大丈夫」と思っている家族ほど、事前準備がなく、いざというときの相続手続きが難航してしまうケースが多いものです。
子どものいないご夫婦にとって、遺言書は「争いを防ぐもの」というより、「大切な家族への思いやりを形にするもの」だと思っています。二人で築いてきたものを、大切なパートナーにしっかり残す。その意思を形にするのに、難しい手続きは必要ありません。
私自身も同じ立場として、このテーマは特に身近に感じています。夫婦や家族の形は、本当に人それぞれ。誰に財産を残したいかもまた、それぞれ異なるものです。
今回は、遺言が必要なケースの第一弾として、「すべてをパートナーに残したい」というパターンをご紹介しました。
「うちの場合はどうなるんだろう?」「遺言書って、どこから始めればいい?」そんな疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に考えていきましょう。
