AIが行政手続きを代行する未来は、もうすぐそこに。2030年代の行政サービスを想像してみる

「車庫証明の申請を、AIエージェントに頼む日が来る」——そう聞いて、ピンとくる方はまだ少ないかもしれません。
令和8年7月21日、政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を公表しました。この中で明記されたのが、マイナンバーカードと外部のAIエージェントを安全につなぐ基盤「MCP」の構築です。今回は、この発表をもとに、2030年代の行政サービスがどう変わっていきそうか、行政書士の視点から想像図を描いてみたいと思います。
※本記事は、政府が公表した計画に基づく現時点での見立てであり、将来を確約するものではありません。今後の制度設計次第で、内容は変わり得る点をご了承ください。
何が発表されたのか
今回の重点計画で、特に目を引くポイントは3つあります。
ポイント①:AIエージェントが行政サービスにアクセスするための「入口」を作る
MCPとは、AIエージェントが外部のサービスやデータに安全にアクセスするための、世界的に普及が進んでいる標準的な技術仕様です。これをマイナンバーカードや行政システムに組み込むことで、AIが本人に代わって手続きを進められる基盤を整える、というのが今回の発表の中心です。構築は2027年度中を目途としています。
ポイント②:次期マイナンバーカードは2029年度に延期
デザインを刷新した次期マイナンバーカードについては、当初の想定から導入時期が2029年度へと後ろ倒しになりました。あわせて、スマートフォンへのマイナカード機能搭載や、モバイル運転免許証の検討も盛り込まれています。
ポイント③:2030年代半ばの将来像として「AI駆動型国家」を掲げる
計画では、住民がAIエージェントの支援を受けながら行政サービスを利用し、AIエージェントが住民相談や申請手続きの多くを代行する社会像が描かれています。人手不足が深刻な自治体でも、少人数の職員で質の高い行政サービスを提供し続けられる社会を目指す、としています。

2030年代、車庫証明や名義変更はどうなっているか
ここからは、あくまで想像です。
もしこの構想がそのまま実現するなら、車庫証明や自動車登録のような、書式が決まっていて判断の余地が少ない定型的な手続きは、AIエージェントによる代行が最も進みやすい領域の一つだと思います。所在図・配置図の作成、必要書類のチェック、警察署や運輸支局への提出——こうした作業の一部は、将来的にAIが本人の代理として自動で進める形に近づいていくかもしれません。
一方で、次期マイナンバーカードの導入自体が2029年度へ延期されたことからもわかるように、行政のデジタル化は、発表された計画通りのスピードで進むとは限りません。マイナンバーカードの取得・普及にも長い時間がかかったように、AIエージェントとの連携が実際に「当たり前」になるまでには、相応の年月がかかると見ておくのが現実的だと思います。
それでも、人が担う部分は残ると思う理由
行政書士の立場からあえて言うと、この変化を「仕事がなくなる話」として捉えてはいません。理由は2つあります。
判断が必要な場面は、簡単にはなくならない
車庫証明ひとつとっても、法人の使用の本拠が2km以上離れているケースの救済策や、賃貸物件のオーナーとの調整など、定型書式には収まらない個別事情への対応が必要な場面は少なくありません。AIエージェントが定型作業を担うようになるほど、こうした「型に当てはまらない相談」に対応できる専門家の価値は、むしろ相対的に高まっていくと考えています。
「本人に代わって手続きを進める」という点は、今の行政書士業務と本質的に同じ
今回の構想は、AIエージェントが本人の代理として行政手続きを進めるという発想です。これは、私たち行政書士が今まさに担っている役割そのものでもあります。
ただし、構造が同じであるゆえに、両者の違いも見えてきます。代理行為には法的な責任が伴い、判断を誤れば依頼者に不利益が生じます。行政書士は資格制度・懲戒制度によってその責任の所在が明確ですが、AIエージェントが代理行為を行う場合の責任の所在は、現時点ではまだ制度として整理されていません。
だからこそ、将来的にはAIエージェントと行政書士が競合するというより、AIが担うことで生じる責任の所在の曖昧さを踏まえた上で、定型的な書類作成・確認の支援はAIに任せつつ、最終的な責任を負う立場として複雑な事情の整理や判断は専門家が担う、という役割分担に近づいていくのではないかと見ています。

まとめ
今回の発表は、まだ「基盤を作る」という段階の話であり、車庫証明や自動車登録の実務がすぐに変わるわけではありません。ただ、行政手続きのあり方が中長期的に変わっていく大きな方向性が示されたのは確かです。
私たち行政書士も、こうした制度・技術の動きを日々キャッチアップしながら、変化の中でお客様にとって一番良い形で手続きを進められるよう、準備を続けていきたいと思います。
※本記事は令和8年7月21日公表の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の報道内容に基づく、現時点での個人的な見解です。将来の制度設計や実施時期は、今後変更される可能性があります。
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