田口 久美子
自分が亡くなった後、ネット証券やサブスクはどうなる?|家族が困らないためのデジタル遺産の整理のコツ5選【行政書士が解説】

ネット証券のつみたて、動画や音楽のサブスク、スマホ決済の残高。毎日の暮らしの中で、こうしたサービスを使っている方は多いと思います。
では、もしご自身が亡くなったとき、それらがどうなるのか、考えたことはありますか? ご家族は、あなたがどのサービスを使っているか、知っているでしょうか。
この記事では、亡くなった後にネット上の財産や契約がどうなるのかを整理したうえで、ご家族が困らないために、今からできる備えをご紹介します。
この記事でわかること
亡くなった後、ネット証券やサブスクなどはどうなるのか
準備がないと、ご家族がどんなことで困るのか
今日からできる、デジタル遺産の整理のコツ5選
遺言書・死後事務委任契約で備える方法
自分が亡くなった後、ネットの財産や契約はどうなる?
デジタル遺産(でじたるいさん)とは?
スマホやパソコンの中、インターネット上に残された財産やデータ、契約のことです。法律上の正式な用語ではなく、一般的な呼び方として使われています。
一口にデジタル遺産といっても、亡くなった後の扱いは、種類によって異なります。
種類 | 亡くなった後は? |
|---|---|
ネット銀行・ネット証券・暗号資産 | 預貯金などと同じく相続の対象です。ただし、ご家族が存在に気づかなければ、手続きされないまま残ってしまいます |
スマホ決済・電子マネーの残高 | 相続人に払い戻せるものもあれば、ポイントなどのように失効するものもあり、サービスごとに異なります |
サブスク・クラウドの利用料 | 解約の手続きがされるまで、引き落としが続きます |
後払い決済・ネット完結型のローン | 借金も相続の対象になり、ご家族が引き継ぐことになります |
SNS・LINEなどのアカウント | 規約上、ご家族が引き継げないとされているサービスも多く、削除などの手続きが中心になります |
つまり、「お金」に関わるものは、ご家族が見つけて手続きしてはじめて引き継がれ、「契約」に関わるものは、誰かが止めない限り続いていく、ということです。

準備がないと、ご家族はこんな場面で困ってしまいます
スマホのロックが解除できず、どの銀行や証券会社を使っていたのか分からない
携帯電話を解約した後、ネット銀行の確認コードが受け取れなくなる
遺産分割の話し合いがまとまった後に、別の口座が見つかる
使っていないサブスクの引き落としが、何か月も続く
こうした場合でも、専門家が調査や手続きをお手伝いすることはできます。ただ、時間も手間もかかり、ご家族の負担は小さくありません。
今日からできる、デジタル遺産の整理のコツ5選
コツ1. 「どこに何があるか」の一覧を作る
利用しているサービスの名前と用途を一覧にして財産目録を作っておきましょう。「〇〇ネット銀行(給与の受け取り口座)」「〇〇証券(つみたて用)」のように用途まで書いておくと、ご家族が手続きの優先順位をつけやすくなります。
財産目録(ざいさんもくろく)とは?
どんな財産が、どこに、どれくらいあるかを一覧にまとめたものです。遺言書の作成や相続手続きの土台になります。
コツ2. パスワードは、一覧とは「別の場所」に保管する
一覧表にパスワードまで書いてしまうと、紛失や盗み見があったときのリスクが大きくなります。パスワードは封筒に入れて別の場所(金庫など鍵のかけられる場所)に保管し、一覧には「パスワードの保管場所」だけを書いておく、といった分け方がおすすめです。
コツ3. スマホの「開け方」を託しておく
デジタル遺産の手がかりの多くは、スマホの中にあります。スマホのパスコードも、コツ2と同じように保管し、信頼できるご家族に保管場所を伝えておくと安心です。
コツ4. サービスに備わった「もしもの機能」を設定する
一部のサービスには、万が一のときに備えて、データを託す相手を事前に指定しておける機能があります。
Apple:「故人アカウント管理連絡先」
Google:「アカウント無効化管理ツール」
ただし、こうした機能で引き継げるのはデータの一部で、アカウントそのものを引き継げるわけではありません。設定方法や対象となる範囲は、各社の最新の案内をご確認ください。
コツ5. 使っていないアカウントは、今のうちに整理する
使っていないサブスクやアカウントを解約しておくだけで、ご家族が対応すべき数を減らせます。年に一度、一覧を見直すタイミングで整理すると続けやすいと思います。

遺言書・死後事務委任契約で、さらに確実に備える
遺言書で「誰に引き継ぐか」を決めておく
ネット銀行・ネット証券・暗号資産なども、遺言書で引き継ぐ人を指定できます。ただし、書き方には注意が必要です。
▲ 望ましくない例 | ◎ 望ましい例 |
|---|---|
「ネットの口座はすべて長男に」とだけ書く | サービス名や口座番号など、財産を特定できる情報を書く |
遺言書にパスワードを書き込む | パスワードは遺言書とは別に管理する |
遺言書は、相続手続きの中で複数の方の目に触れることがあります。また、パスワードは変わることも多いため、遺言書に書くのには向いていません。

死後事務委任契約で「止めてほしいこと」を託す
サブスクの解約やSNSアカウントの削除など、財産の分け方とは別の「亡くなった後の事務」は、死後事務委任契約で信頼できる人に託しておく方法があります。
死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)とは?
亡くなった後に必要になる手続き(各種契約の解約など)を、生前に信頼できる人に依頼しておく契約です。遺言書では決められない事務を、あらかじめ託しておくことができます。
なお、各サービスの規約によって、手続きできる範囲は異なります。
準備がないまま相続が始まったら
ここまでの準備ができていなかった場合でも、ご家族が困り果ててしまうわけではありません。行政書士は、スマホの外からの財産調査や、各サービスへの相続手続きの書類準備、ロック解除を専門業者に依頼する際のサポートなどをお手伝いできます。
▶ 故人のスマホのロックが解除できない場合はどうすれば?デジタル遺産の相続で行政書士ができること(ご遺族向けコラム)
まとめ
ネット上の財産は、ご家族が見つけなければ引き継がれず、契約は誰かが止めない限り続いていきます
まずは「どこに何があるか」の一覧を作り、パスワードは別の場所に保管しましょう
遺言書や死後事務委任契約を使えば、引き継ぐ人や亡くなった後の手続きまで、あらかじめ決めておくことができます
どこまで準備するかは、お使いのサービスやご家族の状況によってさまざまです。ご自身のペースで、できるところから始めていただければと思います。
当事務所について
当事務所(くみ行政書士事務所/新潟市西区)の代表は、大手企業のIT部門での実務経験を持つ行政書士です。ネット銀行やサブスク、スマホの設定といったお話も、専門用語に頼らず、一緒に整理していきます。
デジタル遺産を含めた、財産の洗い出しと一覧づくり
公正証書遺言の作成サポート
死後事務委任契約の文案作成
「付言事項」として、SNSや写真の扱いに関するお気持ちを言葉にするサポート
付言事項(ふげんじこう)とは?
遺言書の中で、財産の分け方とは別に、ご家族へのメッセージやその分け方にした理由などを書き添える部分です。法的な拘束力はありませんが、ご家族がご本人の想いを知る手がかりになります。
「何がデジタル遺産にあたるのか、まず話を聞いてみたい」という段階からのご相談も承っております。お気軽にご相談ください。
※本記事の情報は執筆時点のものです。制度や取り扱いは変更される場合がありますので、実際の手続き前に管轄窓口または当事務所までご確認ください。
