トップ

/

コラム

/

遺産分割協議書は自分で作成できる?行政書...

2026.07.30

相続

投稿者:田口 久美子

遺産分割協議書は自分で作成できる?行政書士・司法書士・税理士の違いと依頼先の選び方

「遺産分割協議書って自分たちで作れるのかな」――相続の話が進んでいくと、そんな疑問を持たれる方もおられると思います。

ネット検索すると、テンプレートやひな形は数多く見つかります。そのまま使えば費用もかからず、専門家に頼む手間も省けそうに見えますよね。
でもその一方で、もしかするとこんな不安がよぎるかもしれません。
「銀行や法務局で受け付けてもらえなかったらどうしよう」
「あとになって無効だと言われたらどうしよう」

さらに、実はそれ以外にも、自分で作る場合はいくつかのリスクが潜んでいます。
今回は、遺産分割協議書の概要や、自分で作る際の注意点、専門家に依頼する際のポイントについて解説していきます。

遺産分割協議書とは何か

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の財産を、相続人全員でどのように分けるかを話し合い(遺産分割協議)、その結果を書面にまとめたものです。

この書類は、単に「話し合いの記録」ではありません。不動産の名義変更(相続登記)、銀行預金の解約・払い戻し、証券口座の名義変更など、さまざまな相続手続きの現場で「相続人全員が合意した証拠」として提出を求められる、手続き上とても重要な書類です。

なお、専門家ごとの役割の全体像や、誰に相続手続き全般を相談すべきかについては、当事務所の別コラム「【保存版】相続手続きは誰に頼む?行政書士・司法書士など『4つの専門家』の違いと費用」で詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。

この記事では、遺産分割協議書という書類に焦点を絞ってお伝えします。

自分で作成する場合の注意点

遺産分割協議書の作成に、資格は必要ありません。相続人全員が合意していれば、法律上は誰が作成しても大丈夫です。ただし、以下の点にご注意ください。
詳しく見ていきましょう。

ポイント① 相続人・財産の特定不足

この書類を作成するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を追い、すべての相続人を把握する必要があります。しかし「全員」の情報がそろわないまま協議書を作成してしまうケースが少なくありません。あとから新たな相続人(前婚の子など)が判明すると、その協議書は無効となり、最初からやり直しになってしまいます。

また、財産についても同様の不安要素があります。不動産であれば地番・家屋番号まで登記事項証明書のとおりに正確に記載していないと、法務局で相続登記の申請が受け付けられないことがあるんです。

ポイント② 署名・押印の不備

相続人全員の実印による押印と、印鑑証明書の添付がほぼ必須です。せっかく全員の押印を集めても、うっかり(実印ではなく)認印を押されている方がいたりすると、銀行や法務局の窓口で差し戻されてしまいます。その場合、再度相続人全員に連絡を取り、再度書類をやりとりする手間が発生し、数週間単位で手続きが遅れることも考えられます。

ポイント③ 代償分割・換価分割の記載漏れ

「長男が自宅を取得する代わりに、次男へ代償金300万円を支払う」
たとえばこんなケースの場合、その金額や支払期限を協議書に明記しておかないと、あとで「言った・言わない」のトラブルに発展しかねません。単なる財産の一覧ではなく、分割の条件まで具体的に落とし込む必要があります。

これらの不備は、ほんのささいな事に見えていても、金融機関や法務局での「受理・不受理」を左右する重要なポイントです。手続きが差し戻されるたびに、相続人全員の予定を合わせて書類を作り直すという負担が生じてしまいます。

遺産分割協議書を作成できる人は?

遺産分割協議書の作成は、相続人自身が行うことも、専門家に依頼することもできます。相続に関わる主な専門家とその役割は、次のように整理されています。

  • 相続人自身
    資格不要で作成可能です。ただし前述のとおり書類不備の際のリスクが発生します。

  • 行政書士
    戸籍の収集や相続人・財産の調査、遺産分割協議書をはじめとする各種書類の作成を専門とします。相続でもめてしまった場合は、弁護士の仕事となるため、「もめごとがない相続」における「書類作成の専門家」という位置づけです。

  • 司法書士
    不動産の相続登記(名義変更)を専門とします。協議書の作成も、登記の前提となる範囲で行うことができます。

  • 税理士
    本来の専門は相続税の申告・税額計算です。遺産分割協議書の作成は、相続税申告に付随する業務として行う場合に限られ、申告が不要なケースでは対応範囲外となることがあります。

  • 弁護士
    相続人同士で意見が対立し、話し合いがまとまらない場合の代理交渉・裁判を専門とします。

このように、それぞれの専門家が対応できる範囲や「本来得意とする領域」は異なります。次の章で、ケースに応じた依頼先の目安を確認しましょう。

依頼先の選び方

実際にどの専門家に相談すればよいかは、相続財産の内容や相続人同士の状況によって変わります。目安を表にまとめました。

こんな状況の方

主な相談先

理由

揉めごとはなく、戸籍集めや書類作成だけを任せたい

行政書士

相続人・財産の調査と書類作成の専門家

不動産の名義変更(相続登記)が必要

司法書士

相続登記そのものを専門とする

相続税の申告が必要(遺産総額が基礎控除を超えそうな場合など)

税理士

税額計算・申告を専門とする

相続人同士でもめている、または連絡が取れない相続人がいる

弁護士

代理交渉・裁判を専門とする

「うちの場合はどれに当てはまるかわからない」という方も多いと思います。その場合は、まずは上記いずれかの相談先に相談し、必要に応じて他の専門家につないでもらうという進め方が現実的です。

費用相場の比較

費用は依頼する専門家や地域、財産の内容によって幅がありますが、一般的な目安は次のとおりです。

戸籍収集や遺産分割協議書の作成のみを行政書士に依頼する場合は、比較的抑えた費用で対応できる傾向にあります。不動産の相続登記まで依頼する場合は、司法書士への登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)が別途かかります。相続税の申告が必要な場合、税理士報酬は遺産総額の0.5〜1%程度が一般的な目安として言われることが多いですが、財産の内容や依頼先によって幅があります。相続人の間で争いがあり弁護士に依頼する場合は、数十万円から、遺産額に応じた報酬がかかるのが一般的です。

このように、実費や報酬の考え方は各専門家によって異なります。

当事務所でできること

私たち行政書士は、相続人・財産の調査から遺産分割協議書の作成まで、もめごとのない相続における書類作成のお手伝いをしています。新潟市西区の事務所を拠点に、戸籍の取り寄せや金融機関でのやり取りなど、平日の日中にお時間を取りづらい方の代わりに窓口対応を承ることも多くあります。

不動産の名義変更や相続税の申告が必要な場合は、日頃から連携している司法書士・税理士におつなぎいたします。

「協議書のひな形はあるけれど、この内容で大丈夫か確認してほしい」というご相談から承ることもできます。まずはお気軽に今の状況をお聞かせください。

まとめ

遺産分割協議書は、資格がなくても作成できる書類です。しかし、相続人・財産の特定不足や押印の不備、代償分割の記載漏れなど、実務上のミスが原因で手続きが差し戻されるケースは少なくありません。不動産が絡むのか、相続税がかかりそうか、相続人同士の関係はどうか――こうした状況によって、適した依頼先も変わってきます。

自分たちで進めるべきか、専門家に任せるべきか。その判断のための情報を、一つの材料としてお持ち帰りいただければ幸いです。

RELATED SERVICE相続手続きは、まとめてご相談ください

戸籍集めや遺産分割協議書の作成など、相続に関する手続きをまとめてサポートしています。