田口 久美子
車の個人売買、売買契約書は自分で作れる?【書式PDFつき】行政書士に頼む場合との違いも解説

長く乗ってきた車を、知り合いが「譲ってほしい」と言ってくれた。
フリマアプリに出したバイクに、買い手がついた。
うれしい知らせのはずなのに……
「代金はいつ払ってもらう?」
「名義変更は誰がやるの?」
「渡したあとに故障したら?」
……と、気になることが次々に浮かんできます。
お店を通さない個人売買では、こうした決めごとを自分たちで整えておく必要があります。
とはいえ、一般的なケースであれば、ひな形(テンプレート)を使ってご自身で契約書を作ることは十分にできます。
この記事では、個人売買でも契約書作った方が良い理由から、契約書に入れておきたい項目、テンプレートを使うときの注意点、行政書士に頼む場合との違いまで、順番に整理していきます。
この記事でわかること
個人売買でも契約書を作ったほうがよい理由
契約書に入れておきたい項目と、ひな形の骨組み(書式のPDFつき)
自分で作る場合と、行政書士に頼む場合の違い
専門家への相談を考えたほうがよいケース
個人売買でも、売買契約書を作ったほうがよい理由
売買は、「売ります」「買います」という当事者の合意で成立します。つまり、口約束だけでも契約そのものは成り立ちます。
関連コラム:【法律の豆知識】「口約束」も契約になるって本当?
それでも契約書を作っておく理由は、「何を約束したのか」を、あとから確かめられる形で残しておくためです。車は金額が大きく、引き渡したあとも名義や税金、事故の責任など、いくつもの手続きや決めごとが続きます。記憶だけに頼ると、お互いに悪気がなくても「そんなつもりではなかった」というすれ違いが起こりやすくなります。
よくあるトラブルの例
名義変更がなかなか行われず、翌年度の自動車税の通知が売主に届いてしまった
引き渡したあとの駐車違反や事故について、売主に連絡が来た
引き渡し後すぐに不具合が見つかり、「聞いていなかった」と買主から修理代を求められた
分割払いの途中で、支払いが止まってしまった
ローンが残っていて車検証の所有者が信販会社のままだったため、名義変更ができなかった
どれも、契約書で「いつまでに・誰が・どうするか」を決めておけば、防げたり、話し合いの土台にできたりするものです。
売買契約書に入れておきたい項目
契約書といっても、難しい言葉を並べる必要はありません。大切なのは、「どの車を」「いくらで」「いつ・どうやって」引き渡すのか、そして引き渡したあとのことを、お互いが同じように理解していることです。
まずは、契約書に書いておきたい項目を一覧にしました。
もし既にお手元にある場合は、契約書やテンプレートと見比べながら、抜けているものがないか確かめてみてください。
チェックリスト

項目 | 書いておくこと |
|---|---|
当事者 | 売主・買主の氏名、住所 |
車両の特定 | 車名、登録番号(ナンバー)、車台番号、型式、初度登録年月など(車検証のとおり) |
売買代金 | 金額(税込かどうかも含めて) |
支払い方法 | 一括か分割か、振込か現金か、支払期日 |
引き渡し | 引き渡し日、場所、付属品(スペアキー、取扱説明書、整備記録簿など) |
所有権の移転時期 | 代金全額の支払い時に移る、など |
名義変更 | 期限、手続きをする人、費用の負担 |
自動車税の扱い | 当事者間で精算するかどうか、その方法 |
引き渡し後の責任 | 引き渡し後の事故・違反は買主の責任とすること |
不具合があったときの扱い | 契約不適合責任をどうするか、知っている不具合の記載 |
契約の解除 | 支払いがない場合などの解除の条件 |
車台番号(しゃだいばんごう)とは?
1台ごとに付けられた、車の識別番号です。ナンバーは変わることがありますが、車台番号は変わらないため、どの車を売買したかを特定するのに使います。
契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)とは?
引き渡した車が、種類・品質・数量について契約の内容と合っていなかったときに、売主が負う責任のことです。買主は、修理(追完)や代金の減額などを求められる場合があります。
契約書の構成例
これらの項目を契約書の形に並べると、たとえば次のようになります。「〇〇」の部分を、ご自身の取引に合わせて書き換えてお使いください。
自動車売買契約書
売主〇〇〇〇(以下「甲」という)と買主〇〇〇〇(以下「乙」という)は、
下記の自動車の売買について、次のとおり契約を結ぶ。
第1条(売買の目的物)車名・登録番号・車台番号・型式・初度登録年月
第2条(売買代金)金〇〇円
第3条(支払方法)支払期日・方法(分割の場合は回数と各回の金額)
第4条(引き渡し)引き渡し日・場所・付属品
第5条(所有権の移転)代金全額の支払いをもって移転する
第6条(名義変更)乙は〇年〇月〇日までに移転登録を行い、
新しい車検証の写しを甲に送る。費用は〇の負担とする
第7条(自動車税等)当事者間での精算の有無と方法
第8条(引き渡し後の責任)引き渡し後に生じた事故・違反等は乙が責任を負う
第9条(契約不適合責任)甲が乙に伝えた不具合(別紙)の扱い、責任の範囲
第10条(契約の解除)
第11条(協議)定めのない事項は誠実に協議する
年 月 日
甲(売主)住所・氏名 印
乙(買主)住所・氏名 印
分割払いにする場合は、第5条の「所有権が移る時期」と第6条の「名義変更の時期」が食い違わないよう、あわせて決めておきましょう。
契約書の書式(PDF)
この構成例をもとにした契約書の書式を、PDFでご用意しました。印刷して手書きで記入できる形式で、知っている不具合や修復歴を書き出す別紙も付いています。
【重要】
この書式は、代金を一括で支払い、ローンが残っていない車を想定しています。分割払いにする場合や、ローンが残っている場合は、書式だけで進めず、個別に検討してください。

自分で契約書を作るときの注意点
上の構成例や当事務所の書式(PDF)をもとにする場合も、インターネットで公開されているテンプレートを使う場合も、書き上げたら次の点を確かめておくと安心です。
車検証と一字ずつ照らし合わせる
車台番号や登録番号の写し間違いは、意外と起こりがちです。車検証を手元に置いて確認しましょう。「現状のまま渡す」だけで済ませない
「現状有姿(げんじょうゆうし)=今ある状態のまま引き渡す」と書くことはよくあります。ただ、売主が知っていた不具合を伝えていなかった場合は、責任を免れないとされています。知っている傷や不具合、修復歴は、別紙などに書き出しておくと安心です。名義変更の期限と担当を空欄にしない
「いつまでに」「誰が」を具体的な日付で書いておきましょう。完了後に新しい車検証の写しを送ってもらう、と決めておくと確認しやすくなります。契約書での取り決めは、売主と買主の間の約束です。名義が売主のままだと、税金や違反の通知は売主に届いてしまうため、期限をはっきり決めておくことが大切です。自動車税の扱いを話し合っておく
自動車税は4月1日時点の所有者に1年分が課税される仕組みです。年度の途中で名義変更しても、税金が月割りで戻ることは原則ありません。残りの月の分を代金に含めるか、別に精算するかは、当事者どうしの取り決めになります。税金の細かな扱いは、都道府県の県税事務所や税理士にご確認ください。お店向けのテンプレートをそのまま使わない
販売店向けのひな形には、個人どうしの取引には合わない条項が含まれていることがあります。自分たちの取引に当てはまるかを、一つずつ確認しましょう。2通作って、それぞれ保管する
同じ内容のものを2通作り、双方が署名して1通ずつ持っておきます。

自分で作る場合と、行政書士に頼む場合の比較
ご自身で契約書を作る場合と行政書士に依頼する場合の比較したものがこちらの表です。
観点 | 自分で作る | 行政書士に頼む |
|---|---|---|
費用 | ほぼかからない | 作成報酬がかかる |
手間 | 項目の確認や条文の調整を自分で行う | ヒアリングをもとに、作成を任せられる |
内容 | テンプレートの範囲で調整 | 分割払いや不具合の扱いなど、個別の事情に合わせて作成 |
向いている方 | 代金が比較的少額で一括払い、車の状態もお互いよく分かっている方 | 金額が大きい、条件が複雑、相手との関係を大切にしたい方 |
当事務所にご依頼いただく場合
当事務所では、定型的な契約書(一般的な売買契約など)の作成を55,000円〜(税込)で承っています。
ご自身で作った契約書や、テンプレート(当事務所の書式を含みます)に記入した契約書の内容確認も承っています(料金:33,000円~(税込))。契約書の作成は、オンラインでのご相談にも対応しています。
料金は掲載時点のものです。最新の料金表もあわせてご確認ください。
【重要】
なお、行政書士がお手伝いできるのは契約書の作成までです。相手との条件交渉の代理や、トラブルが起きたあとの対応はできません。トラブルになった場合は弁護士へご相談ください。当事務所から、提携する専門家へおつなぎすることもできます。
専門家への相談をお勧めしたいケース
次のような場合は、テンプレートだけで進める前に、一度専門家(※行政書士を含む)に相談することを考えてみてもよいかもしれません。
車の代金が高額:
万一のときの影響が大きくなります分割払いにする:
支払いが滞った場合の扱いや、所有権をいつ移すかを丁寧に決めておく必要がありますローンが残っている:
車検証の所有者が信販会社などになっている場合、名義変更の前に所有権の解除が必要です事故歴や不具合の扱いをはっきりさせたい:
責任の範囲を条文で整理しておくと、後の話し合いがしやすくなります知人・親族どうしで、関係を大切にしたい:
近い間柄ほど、お金のことは言い出しにくいものです。第三者が入って整えることで、気まずさを減らせることもあります
所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)とは?
ローンを払い終えるまで、車の所有者を信販会社や販売店のままにしておく仕組みです。車検証の「所有者」欄が本人以外になっていないか、売買の前に確認しておきましょう。
契約のあとは、名義変更の手続きへ
契約書を交わしたら、次は名義変更(移転登録)です。名義が変わらないままだと、税金や違反の連絡が売主に届き続けてしまいます。売買とあわせて進めておきたい手続きです。

当事務所では、新潟ナンバーの自動車の名義変更(移転登録)の代行を13,200円(税込)で承っています(印紙代・登録免許税などの実費は別途)。
料金は掲載時点のものです。最新の料金表もあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 車の売買契約書に、収入印紙は必要ですか?
A. 車のような「動産」の売買契約書は、印紙税の課税対象にはあたらないとされています。ただし、車両代金とは別に「リサイクル預託金相当額」を記載すると、その部分が債権譲渡に関する契約書として扱われ、印紙が必要になる場合があります。判断に迷うときは、税務署へご確認ください。
Q. バイクの売買でも、同じように作れますか?
A. はい、基本的な項目は同じです。車検証や標識交付証明書などに記載された車台番号などで、車両を特定します。名義変更の窓口は排気量によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
Q. 口約束だけではだめですか?
A. 口約束でも契約は成立します。ただ、名義変更の期限や不具合の扱いなど、決めることが多い車の売買では、書面にしておくほうがお互いの安心につながると思います。
Q. 家族に無償で譲る場合も、売買契約書ですか?
A. 代金を受け取らない場合は、売買ではなく「贈与」になります。贈与税などの税金が関わる場合もありますので、税理士や税務署へご確認ください。
まとめ
個人売買でも、約束の内容を残すために契約書を作っておくと安心です
一般的なケースなら、テンプレートやこのコラムでご紹介した当事務所の書式(PDF)を使って、ご自身で作ることができます。車台番号・名義変更の期限・不具合の扱いは、丁寧に確認しましょう
高額・分割払い・ローン残りなど、条件が複雑な場合は、専門家への相談も選択肢のひとつです
契約のあとは、名義変更までを一連の流れとして考えておきましょう
自分で作るか、専門家に依頼するか。どちらが正解というものではなく、ご自身の状況に合わせて選んでいただければと思います。
ご相談について
「テンプレートで作ってみたけれど、これで合っているか不安」「この条件なら頼んだほうがいいのかな」。そんな段階からのご相談も承っております。くみ行政書士事務所は、先生としてではなく、あなたの歩幅に合わせるパートナーとして、一緒に整理していきます。
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※本記事の情報は執筆時点のものです。制度や取り扱いは変更される場合がありますので、実際の手続き前に管轄窓口または当事務所までご確認ください。
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